futurala / Yasuki Watanabe
遊び/ゲームを軸にした分野横断クリエイター支援プロジェクト〈ars●bit(アーソビット)〉は、2026年10月10日から11月8日にかけて、フランス・アルルのトリニテ修道院礼拝堂(Chapelle des Trinitaires)にて、プロジェクトの育成対象アーティスト陣が一同に会する集大成的なグループ展「Anima Ludens(アニマ・ルーデンス)」を開催します。本展は毎年開催されている先端テクノロジーとアート&カルチャーをテーマとした芸術祭「Festival Octobre Numérique」のメインプログラムとして実施され、日本の現代アートとインディーゲームを横断し、「遊ぶ生命」という視点から、生命・テクノロジー・環境の新たな関係を探る展覧会です。
生命と芸術の根源に〈遊び〉を見出す、ポストヒューマン時代の創造原理
ars●bitは、現代アートとインディーゲームを、〈遊び〉を共通の源泉として持ち、メディアテクノロジーの発展を通じて現代の情報環境下で再び接近しつつある表現文化として捉え、その領域を横断する新たな才能と作品を育んできました。京都では、ホテル アンテルーム 京都とインディーゲームの祭典「BitSummit」との連携から生まれた展覧会「art bit」を展開。東京・渋谷の「404 Not Found」では、異分野の表現者によるクリエイティブジャム等の取り組みを通じて、新たなアート×ゲーム作品を生み出してきました。「Anima Ludens」は、こうした展覧会、作品制作支援、クリエイター同士の協働を重ねてきたプロジェクトの一つの集大成として、その成果を国際的な舞台へと展開するものです。
「Anima Ludens」とは、かつて歴史家ヨハン・ホイジンガが提唱した〈ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)〉を、より広い生命と環境へと拡張する〈遊ぶ生命〉という考え方です。遊びは、ルールや境界によって秩序をつくると同時に、それらを揺さぶり、別の可能性を試す営みでもあります。本展では、人間を含む多様な生命からなる生態系、AIをはじめとするテクノロジー環境、あるいはそれらを結びつけるキャラクター的・神話的な想像力が相互作用し、新たな関係を生み出していく可能性に着目。政治的・文化的・生態学的な分断が深まる現代の地球社会に向けて、〈遊び〉を異なる存在同士を結び直し、多様な文化や自然をつなぐ力として捉え直します。
南仏アルルの歴史的建築で、現在は多くの芸術イベントの会場として活用されているトリニテ修道院礼拝堂を舞台に、日本の現代アートとインディーゲームの現在を、インタラクティブ作品、映像、絵画、立体など多様な表現を通じて紹介します。去る4〜6月に京都で開催された「art bit #6:ゲーム・プレイング・ソサエティ」とも対をなし、人間社会のルールを遊び直すという問いを生命・環境・テクノロジーの関係へと拡張し、遊びから生まれる新たな芸術表現と共生の可能性を展望します。
身体と想像力、テクノロジーと生態系が交錯するゲーム×アートの共創
本展では、ゲームと現代美術、さらに両者の融合形態を模索する多彩なメディウムの作品群を、「遊ぶ生命」という共通の視座から共鳴させながら、同じ教会空間を活用した異種混交的なエコシステムを形成します。
ビデオゲーム作品の筆頭となるのが、世界的なバイラルヒットを記録し、映画化作品がカンヌ国際映画祭にも招待されて日本を代表するインディーヒット作品となったKOTAKE CREATE《8番出口》。無限に続く地下通路の「異変」を見つけるというシンプルな遊戯的ルールから、日常的な都市空間を奇妙な生命感をもつリミナルスペースへと変換します。
また、アニメーターのはなぶしと国内屈指のインディーゲームレーベル「ヨカゼ」を率いる hako生活とのコラボレーション《PIGGY ONE SUPER SPARK》は、ポップな人外キャラクターによるリズミカルな2Dスクロールアクションの爽快感とロードムービー的な旅が、リズミカルにアニメイトされます。
宇佐美奈緒《I stitch my skin to the ground》は、性加害によって身体を「モノ」とされた被害者/サバイバーの語りをもとに、新たな身体を探す旅を描く二つのビデオゲームからなるプロジェクトです。プレイヤーによる操作の喪失や、人間・動物・植物・機械が混ざり合うノンバイナリーな身体の再獲得を通じて、自己と身体を隔てる境界を問い直します。
そして、本展のメインビジュアルともなっているフツララ《CultureHouse》は、失踪した科学者の居住・研究施設を舞台に、プレイヤーが研究員として奇妙な細胞を培養するという開発中タイトル。リセットされた世界で未知の生命を育て、観察し、関係を築く行為そのものをゲームとして経験させ、不穏と希望に引き裂かれた「アニマ・ルーデンス」の現出を予言します。
これに呼応する現代美術系の作品群の先頭を飾るのが、京都で展開されてきたart bit展の看板作家でもある竹内義博による二枚組絵画《Re:》。戦後現代美術の出発点とも言える抽象表現主義と、ビデオゲーム産業の原点たる「パドルとボール」式ゲームの一回性との接続により、さながらゲーム・プレイング・ペインティングとも呼べる原初的な体験に鑑賞者を誘います。
アジア発のテック・フェミニズムアートの象徴的存在となりつつある草野絵美《Ornament Survival – Nursing the Machine》《Ornament Survival – Endless Optimization》は、作家自身の身体をデジタルデータ化し、自己と他者が連続化する集合無意識的な知性の「器」となったAIツールのフィルターを使ってポートレイトとして固定化される過程を通じて、その維持に費やされる自然資源や終わりのない最適化を問い直します。
激しい身体衝突を伴う表現方法で世界的に注目されるパフォーマンス・アートユニットcontact Gonzoが手がけた《Fortune Assholer》は、物理的な貨幣に傾斜を滑走させる原初的なコインゲーム式の仕組みにより、遊び手の自己が天運に向けて投企される「身体なきパフォーマンス」をアイロニカルに現出させます。
マルチスピーシーズ人類学などの機運と呼応し、脱人間中心的な芸術実践で注目を浴びる大小島真木の《渦き》《fontanelle—シシ》《Re forming 〈 I 〉ver.2》は、傷や疼き、脆弱な存在同士の共振と溶融のダイナミズムを、陶、GANによる生成映像、土地の素材を横断して描きます。身体の縫合線と地質学的な断層、個体と環境とを重ね合わせながら、生命が循環し、再形成される過程を、様々なメディウムの融合を通じて示していきます。
ビデオゲームと現代美術のクロスオーバー表現の最先端を開拓するアーティスト・たかくらかずきは、仏壇や仏具とゲームデバイスを融合させる《GAME OVER: BUTSUDAN GAME》《電脳三昧耶》を通じて、デジタルな遊戯と仏教的な世界観、瞑想的な儀礼とを接続します。
伝統工芸の分野で「もの」に「こころ」を見出す付喪神的な世界観を受け継ぎながら、かつての実用装具に生物的な造形と魂を宿らせる鍛金作家・塩見亮介は、オウギワシをモチーフに銅や鉄を鍛えた甲冑作品《鷲面附茶絲素懸縅兜袖「扇」》を出展。そしてゲームデザイナーのカミエナおよびプログラマーの金子尊とのコラボレーションにより、工芸とビデオゲームの融合をはかるプロジェクトの最新モデル《PRJ CÔGEIMU 「ARE YOU THERE?」》が、世界初公開となります。銅製の鍛金少女の眼窩の奥にゲーム画面を組み込み、頬に触れて体温を伝えることで、「作品で遊ぶ」のではなく「作品と遊ぶ」体験を創出。鑑賞という行為を、ヒトとは異なる身体と魂(アニマ)を獲得したモノとの対話に進化させます。
日本の現代アートのスター的な存在ヤノベケンジ《The Spaceship of SHIP’S CAT》およびピクセルアーティストBAN8KUがステージ設計を手がけたYANOKEN PROJECT《SHIP’S CATの大冒険》は、彫刻としてのゲーム筐体と産学連携によるゲーム制作を接続し、観客の選択と行為を取り込む文字通りの「社会彫刻」として、アートとゲームの新たな関係を提示します。
そして関西・大阪万博2025の舞台イベントのために多人数参加型の実験的インスタレーション《The White Anteroom》を創出した戸村陽・薄羽涼彌・HSP・ma 間マ摩(Shin)のユニットにより、多くの来場者の操作体験が蓄積によって、会期を通じて動的な〈ゲーム・プレイング・ソサエティ〉を構築していく次なる挑戦のプロトタイプが試みられます。
Festival Octobre Numérique 2026とは
Festival Octobre Numérique — Faire Mondeは、フランス・アルルを拠点に、デジタル技術と現代の創造表現の関係を、展覧会、イベント、ゲームジャム、オンラインプログラムなどを通じて探る芸術祭です。ゲーム、映像、VRをはじめとする多様なメディアを横断しながら、テクノロジーを単なる新奇な道具としてではなく、現実・物語・身体・社会を捉え直すための表現環境として提示してきました。「Anima Ludens」は、そのFestival Octobre Numérique 2026のメインテーマとして展開されます。
(Festival Octobre Numérique公式サイト:https://octobre-numerique.fr/)













Yoshihiro Takeuchi Re: / Ryosuke Shiomi Mask of Harpy Eagle (Photo: Miyagawa Kunio) / Emi Kusano Ornament Survival – Nursing the Machine / KOTAKE CREATE The Exit 8 (© KOTAKE CREATE Licensed to and published by Active Gaming Media Inc.) / Hanabushi × hako life PIGGY ONE SUPER SPARK (© hanabushi / hako life)/ Kenji Yanobe The Spaceship of SHIP’S CAT (Photo: Omote Nobutada Work: Kenji Yanobe Pixel Art: BAN8KU / thePIXEL) / Ryosuke Shiomi, KamiEna, and Takeru Kaneko GameArt PRJ “CÔGEIMU” / Takakurakazuki GAME OVER: BUTSUDAN GAME / Nao Usami I stitch my skin to the ground / futurala CultureHouse / contact Gonzo Fortune Assholer / Maki Ohkojima Uzuki | Resonant Wounds / Yo Tomura, Ryoya Usuha, HSP, and mamamama(Shin) The White Anteroom
開催概要
展覧会名:Anima Ludens(アニマ・ルーデンス)
フェスティバル名:Festival Octobre Numérique 2026
会期:2026年10月10日〜11月8日
会場:トリニテ修道院礼拝堂(Chapelle des Trinitaires)、フランス・アルル
主催:Festival Octobre Numérique – Faire Monde、一般社団法人 渋谷あそびば制作委員会 / ars●bit



助成:クリエイター支援基金

開館時間・休館日:10:00〜19:00(月曜休館)
入場料:無料
キュレーター
出展作家・作品一覧
宇佐美奈緒|I stitch my skin to the ground
大小島真木|渦き/fontanelle—シシ/Re forming 〈 I 〉ver.2
草野絵美|Ornament Survival – Nursing the Machine/Ornament Survival – Endless Optimization
KOTAKE CREATE|8番出口
contact Gonzo|Fortune Assholer
塩見亮介|鷲面附茶絲素懸縅兜袖「扇」
カミエナ・塩見亮介・金子尊|PRJ CÔGEIMU『ARE YOU THERE?』
たかくらかずき|GAME OVER: BUTSUDAN GAME/電脳三昧耶
竹内義博|Re:
戸村陽・薄羽涼彌・HSP・ma 間マ摩(Shin)|The White Anteroom (Anima Ludens Edition)(仮)
futurala|CultureHouse
はなぶし × hako生活|PIGGY ONE SUPER SPARK
ヤノベケンジ|The Spaceship of SHIP’S CAT
YANOKEN PROJECT|SHIP’S CATの大冒険
キュレーション協力:高橋洋介
ars●bitについて
ars●bit(アーソビット)は、遊び/ゲームを軸に、現代アートとインディーゲームをはじめとする異分野の表現者をつなぎ、新たな才能・作品・協働を育むクリエイター支援プロジェクトです。京都の展覧会シリーズ「art bit」や、東京・渋谷「404 Not Found」でのクリエイティブジャムなどを通じて、展覧会、制作支援、領域横断的なコミュニティ形成を行っています。