Beyond Creators Project〈ars●bit〉は、ストロング遊戯博物館(The Strong National Museum of Play)において、同館および立命館大学ゲーム研究センター(RCGS)との共同事業として、日本のインディーゲームの歴史と現在を全世界に向けて紹介する常設展示「日本のインディーゲーム(Japanese Indie Game)」に協力しました。本展示は2026年2月27日より、少なくとも3年間にわたり公開されます。
ストロング遊戯博物館は、アメリカのニューヨーク州ロチェスターを本拠地とする世界最大の「遊び」の博物館です。伝統的なおもちゃや人形から最先端のビデオゲームやXRテクノロジーまで、古今東西の遊びにまつわる貴重なコレクションを学術研究と連携したミュージアムとして系統的に収蔵・展示しているほか、回転木馬やジップラインのような大型の遊戯施設も備え、来場者がテーマパークのように体験できる点を特徴としています。
「日本のインディーゲーム」の展示が設置されたのは、ビデオゲームの歴史を楽しみながら学べるテーマフロア「HIGH SCORE」の一角。同フロアは、『スーパーマリオブラザーズ』や『ストリートファイターll』といったゲーム史を彩る殿堂入りタイトルのプレイアブル展示や、コンピューター技術の黎明期から現在までのゲームテクノロジーの進歩の軌跡、あるいは女性ゲーム開発者の活躍や社会との関係に注目した特集パネルなど、様々な切り口による展示で構成されています。
そうした壮大な展示構成の中で、インディーゲームについてはグローバルな評価を集めたタイトルを特別筐体で遊べる「Indei Arcade」が設けられており、「日本のインディーゲーム」はその隣接コーナーとして開設されました。

本コーナーは、日本のインディペンデントなゲームの歴史を解説パネルと実物資料で紹介する「日本のインディーゲームの歴史(History of Japanese Indie Games)」と、国内インディーゲーム・アワードのノミネート作品等から毎年の最新タイトルを選出し、特別筐体で1年間遊べるようにする「ars●bitセレクション(ars●bit Selection)」の二つの展示セクションで構成。後者の選考はars●bitプロジェクトとストロング遊戯博物館が共同で行い、初年度(2025年)のタイトルには、HANDSUMによるアクションパズルゲーム『MotionRec』が選ばれました。
さらに関連展示として、日本のゲーム産業の黎明期から活躍し、その後のビデオゲーム文化に大きな影響を与えた4名の女性ゲームクリエイターの功績を解説パネルと実物展示で紹介する「日本における先駆的な女性ゲームクリエイターたち(Pioneering Female Game Creators in Japan)」のショーケースも設置されています。
日本のインディーゲームの歴史

「日本のインディーゲームの歴史」の展示セクションでは、過去40年以上にわたる日本のインディペンデント系ゲームの歴史を下記の四つの時代に区分し、各時代の代表的なクリエイター・作品のパッケージやメディアミックス作品、関連グッズ等が二つのショーケースに収められています。
【時代区分と展示作家・作品】
自作ゲームの時代(1970~1980年代):中村光一 『ドアドア』
同人ゲームの時代(1990~2000年代):上海アリス幻樂団(ZUN)『東方紅魔郷』ほか
フリーゲームの時代(2000~2010年代):noprops『青鬼』ほか
インディーゲームの時代(2010年代~現在):KOTAKE CREATE『8番出口』ほか
これらの展示キュレーションは、かつてドワンゴが行ったゲームイベント「闘会議2015」で展示された自作ゲーム特集など日本国内での先行の取り組みを踏まえ、RCGSおよび評論家/編集者の中川大地氏らが監修しています。
また、関連展示「日本における先駆的な女性ゲームクリエイターたち」では、日本のゲーム産業の黎明期に活躍し、その後のビデオゲーム文化に大きな影響を与えた4名の女性ゲームクリエイターの功績が紹介されています。
ピックアップされたのは、光栄の共同創業者で『アンジェリーク』で「乙女ゲーム」ジャンルを創始した襟川恵子氏、リバーヒルソフトなどを創業し、『殺人倶楽部』『アナザーコード』など数多くのミステリーアドベンチャーゲームの企画・シナリオを手がけた鈴木理香氏、『ディグダグ』『ゼビウス』などのナムコ黄金期のサウンドの立役者である慶野由利子氏、そして初期『ファイナルファンタジー』シリーズなどのドラマチックなグラフィックアートを制作し、スクウェアのブランド確立に貢献した渋谷員子氏。展示ショーケースには、彼女らが手がけた代表的な作品群が収められています。
ars●bit セレクション2025:HANDSUM『MotionRec』

「ars●bitセレクション」の展示セクションでは、初年度(2025年度)の選定作品として、インディー系ディベロッパーのHANDSUM(ディレクター:shoma、グラフィック:m7kenji、コンポーザー:kyoheifujita)が開発した『MotionRec』がプレイアブル展示されています。
『MotionRec』はプレイヤーの動きを録画し、再生する能力を使い、崩壊した世界を進んでいく2Dパズルアクションゲーム。録画する能力は、歩くことからジャンプまでの軌跡を記録可能。この能力を使いながら、ステージのギミックを活用し、先へ進んでいくことを魅力としています。
また、本作は日本でも近年整備の進んでいるインディーゲーム開発支援を受けて発売されたタイトルでもあります。『MotionRec』はiGi indie Game incubatorの第4期に選出され、6ヶ月間の開発支援を獲得。ピッチイベントでは多数のパブリッシャーから大きな注目を集め、最終的にPLAYISMと契約に至りました。
『MotionRec』は今回の展示のために、ストロング遊戯博物館がオリジナルのアーケード筐体を作成。同博物館の来場者に、日本のインディーゲームの最前線を実際にプレイできるかたちで展示しています。
RCGS × ars●bit × ストロング遊戯博物館による「日本のインディーゲーム」展 記念シンポジウム

「日本のインディーゲーム」展が開始された2月27日には、ストロング遊戯博物館内のカンファレンスホールにて、オープニングイベントとなる記念シンポジウムも行われました。
15:00 開会挨拶:各関連団体の概要と本展の趣旨

ジョン・ポール・ダイソン(ストロング遊戯博物館 副館長)
中村彰憲(立命館大学映像学部教授、RCGS)
村上雅彦(Skelton Crew Studio CEO、BitSummit理事、渋谷あそびば制作委員会 / ars●bit 代表理事)
イベントのオープニングでは、今回の展示を実現した三つの機関の代表者による挨拶が行われました。まずストロング遊戯博物館の副館長を務めるジョン・ポール・ダイソン氏が長年にわたる同博物館と立命館大学の協働についての祝辞を述べ、中村彰憲氏が日本のゲーム研究を牽引するRCGSの活動を紹介。そして村上雅彦氏がBitSummitを運営するなかで、日本のインディーゲームがどのように発展してきたか、そこから京都での現代アートとインディーゲームの企画展「art bit」展が始まったことや、クリエイター支援基金の採択を受けてars●bitプロジェクトが発足した経緯などが説明されました。
15:10 展示概要

中川大地(評論家 / 編集者、RCGS研究員、ars●bitディレクター)
続いて、本展の共同キュレーションを主導した中川氏が、本展の展示概要を解説。「日本のインディーゲームの歴史」における四つの時代区分とその特徴、関連展示「日本における先駆的な女性ゲームクリエイターたち」でピックアップした4名のパイオニアの来歴、および「ars●bit セレクション」の主旨と『MotionRec』の選考理由などが紹介されました。
15:35 パネルディスカッション:『MotionRec』の魅力と日本のインディーゲームの特徴

HANDSUM(shoma、m7kenji、Fujita)
木原共(アーティスト・ゲームクリエイター)
中村彰憲
中川大地
村上雅彦
リンジー・クラノ(ストロング遊戯博物館 キュレーター)
ディスカッションでは、『MotionRec』開発者のHANDSUMのメンバーによる同作のプレゼンテーションを受けながら、中川氏をモデレーターに、同作の選考ポイントやインディーゲームにおける位置づけ、そこから見えてくる日本のインディーゲーム史の特徴について、「ミニマルなゲームメカニクス」「キャラクターと世界観」「メディアミックス展開」という三つのテーマに沿って、ストロング遊戯博物館側のキュレーターであるリンジー・クラノ氏、中村氏ら関係者がコメントするかたちで進行。さらに、ars●bitと同じクリエイター支援基金の助成事業であるメディア芸術分野の支援プロジェクト「WAN」の育成対象者でニューヨークに滞在中のアーティスト・ゲームデザイナーの木原共氏が議論に加わることで、さらなる発展的な対話が交わされました。
16:30 オープニングセレモニー(除幕式)

シンポジウム終了後には、関係者と聴衆が展示会場「High Score」に移動し、展示ケースの除幕セレモニーが行われました。この様子はロチェスターのテレビ局などの取材が入り、同日夜のニュースでも全米に報じられています(関連記事参照)。
開催概要
名称:日本のインディーゲーム(Japanese Indie Game)
会期:2026年2月27日〜終了未定
主催・会場:ストロング遊戯博物館(The Strong National Museum of Play)
1 Manhattan Square, Rochester, New York 14607
協力:立命館大学ゲーム研究センター(RCGS)・ars●bit / 渋谷あそびば制作委員会
助成:クリエイター支援基金
日本のインディーゲームの歴史(History of Japanese Indie Games)
キュレーション協力:立命館大学ゲーム研究センター(RCGS)・中川大地・斉藤大地
主要参考資料:ドワンゴ「自作ゲーム大年表」(2015年)
日本における先駆的な女性ゲームクリエイターたち(Pioneering Female Game Creators in Japan)
キュレーション協力:立命館大学ゲーム研究センター(RCGS)・中川大地・ゲーム史研究会
主要参考資料:福地健太郎「日本のゲーム黎明期に活躍した日本の女性達」
稲葉ほたて ほか「信長から乙女ゲームまで… シブサワ・コウとその妻が語るコーエー立志伝 「世界初ばかりだとユーザーに怒られた(笑)」」(電ファミニコゲーマー 2016年)
ゲーム保存協会「芸夢 [gei·mɯ] File #2 – Rika SUZUKI ~Pioneering Mystery Games in Japan~」(2022年)
ars●bitセレクション(ars●bit Selection)
2025年度選出作品:HANDSUM.inc『MotionRec』
選考委員:ars●bit(村上雅彦・中川大地・豊川泰行)・ストロング遊戯博物館



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